◆最初は民間稲作研究所の稲葉光國氏の基調講演
無農薬有機稲作の技術的な面においては、一番難問だった除草の問題も含めてほぼ解決されつつあり、次の段階として生物との共生、自然界の大循環と調和の取れた稲作に発展させていくことに視点を変えつつあるようです。
具体的には、冬の間田んぼに水を張って渡り鳥を呼び込み、そのえさ場にすると同時に、肥料を供給してもらったり、雑草の種を食べてもらったり、土地を耕してもらったり、さらにはトキなどの希少な野鳥がちゃんと自分の力で生活していける環境を作っていこうってことですね。っていうか、水田ってのは元々そういうところだったはずで、やっと本来の稲作の姿に立ち返りつつあるのです。
そうはいっても現実にはなかなかむずかしい。技術は完成されたといっても農薬や化学肥料とちがい、それぞれの土地の気候や、土や水の状態に合わせて、独自に方法をアレンジしていかなければならず。やはり個人個人が技術を完成させるには時間がかかるなあ。
冬季湛水も、家のような豪雪地帯では無理だなあ。
◆昼食を挟んで神戸山手大学教授島田彰夫氏の記念講演
テーマは「伝統食 お米と健康」、日本人の食生活についての講演で、この講演がなんだか一番印象に残りました。
現在の食生活の欧米化の始まりは、いわゆる文明開化までさかのぼる「欧米諸国に追いつけ、追い越せ」という国策からずうっと続いているものだそうです。
北緯35度を中心とした日本の地理的な条件は、アミラーゼ活性が高いヒトにとって必須のデンプン源である穀類やイモ類の栽培を可能にし、加えて大豆を利用して、文明開化当時の外国人を驚かせた健康と体力を作り上げました。しかしその生活実績は正当に評価されることなく、タンパク、カルシウム偏重の北緯50度・ドイツの自然環境を反映した食思想がそのまんま無批判に導入され、その結果日本型の米・大豆中心の食生活は完全に破壊されてしまいました。
それでは食生活をどうすればいいか。「ご飯とみそ汁を2〜3倍に、おかずを3分の1に、よく咬んで食べる」だそうです。
それから「大人の離乳」って話もありました。
動物の乳というのは脂肪分をのぞく、糖質、タンパク質、カルシウムなどは、一般にその種のオトナが食性に従って摂取する食物の栄養構成要素を反映していて、ヒトの乳は牛乳やヤギの乳とくらべ著しく高糖質、低タンパク、低カルシウムで、数十年前までの日本人の食生活とほぼ同じだそうです。
一般にいわれるほどタンパクやカルシウムは摂る必要が無く、高タンパク、高カルシウムの牛乳は大人が飲む必要がないって話で、大人は離乳しなさいと。逆に赤ちゃんの離乳が早すぎるなんて話もされていました。
ミョーに納得してしまったせいか、最近あんまり牛乳を飲まなくなったなあ。チーズやバターは大好きなのに・・・。
◆特別報告T 中国黒龍江省の稲作と輸出実態 九州大学教授村田武氏の報告
九州大学の村田武教授が、九州の農家の方たちと中国黒龍江省へ農業の視察に行かれたそうです。黒龍江省は中国北東部の最北端。かつての不毛の大地が今は一大穀倉地帯だそうです。はたしてそれを仕掛けたのは・・・。
1993年の日本の「平成コメ騒動」による米の緊急輸入以降、中国の黒龍江省は急速にジャポニカ米の生産拡大を進めている。
品種はコシヒカリ、きらら397など日本、シンガポール、香港への輸出を念頭において選び、育種は黒龍江省農懇総局所属の水稲研究所で行い、農家にはさせない仕組みになっている。
このコメ販売・輸出戦略の拠点とされている「新綿精米加工有限公司」では日本製の籾摺り機や精米機が導入されていて、その品質はかつての緊急輸入米とはくらべものにならないほど高いレベルに達している。
良食味のコシヒカリは「緑色食品」として出荷するために、すべて契約栽培。緑色食品とは中国の有機認証制度。いわゆる無農薬米や減農薬米。特に有機農産物ブームの日本をターゲットにしている。
これらを仕掛けているのはニチメン、三菱商事、伊藤忠などの日本の商社。
中国国内で販売する場合、なんと1kgあたり約54円という安さ!それでも普通米の2倍の値段!!
いやはや、こんな値段では日本でいくらコストダウンしようったって、値段でかなうわけありません。しかも安全性やおいしさまで日本産と変わらないとなってくると、もはや農家だけがいくらがんばっても日本の農業や環境を守りきることは出来ませんなあ。
健康ブーム、グルメブームもいいけれど、おいしいから、安全だからって基準だけで食べ物を選んでいると、やがては日本から農業がなくなってしまいそうです。
日本の農業が土を守ってる。水を守ってる。空気を守っているって事を忘れずに食べ物を選んでほしいですね。
それはだれにでもできることだと思います。
◆分科会
三つある分科会のうち「遺伝子組み換えと種苗問題」に参加しました。
報告 市民バイオテクノロジー情報室 代表 天笠啓祐氏
現在日本国内では5品種の遺伝子組み換えイネが申請の準備をしていて、消費者の顔色をうかがっている状態。
まずでてきそうなのが、モンサント社と愛知県農試が共同開発したラウンドアップ耐性イネ「祭り晴」。乾田直撒きによるコストダウン、除草剤ラウンドアップとのセット販売が目的。
その他にも殺虫性イネや耐病性イネが申請の準備をしている。
さらには第2世代と呼ばれる、消費者受けの良さそうな低アレルゲン米や低タンパク米、栄養改良米などが開発されている。
報告 ストップ!遺伝子組み換え汚染種子ネット 山田勝巳氏
アメリカの遺伝子組み換え作物の作付け面積の割合は、トウモロコシが26%、ダイズが68%(2001年)。ちなみにこれらが日本人の食卓に出回る割合はトウモロコシが24%、ダイズが38%(2000年)。
カナダ、アルゼンチンでも遺伝子組み換え作物が作付けされていて、アメリカ大陸では遺伝子汚染が広がっている。特にトウモロコシは他家受粉ということもあり、メキシコの原種トウモロコシの中にもすでに、かなりの汚染が進んでいる。(22件中15件)
こういった組み替え遺伝子の自然環境中への放出は、種の絶滅につながりかねない。
これらの組み替え遺伝子は構造的に不安定で、水平伝達する可能性があり、自然界の土壌微生物や小動物へ移行して、想像もできない新生物や、新種のウィルスなどが出現し、生態系が破壊される可能性がある。
報告に続いて質疑応答
Q.味覚や栄養面で消費者のメリットが高い「第2世代」の遺伝子組み換えイネの問題点はなにか
A.問題なのは生産者メリットが高いか、消費者メリットが高いかではなく、「遺伝子組み換え」という技術そのもの。
●遺伝子組み換え技術の問題点
目的の遺伝子を宿主の遺伝子に無理矢理打ち込んで、100〜10万個に1個という、偶然取り込まれたものを選別するという方法で、外来遺伝子をどこに組み込むのかあらかじめ特定できない。これは組み替えた遺伝子が突然変異源として働くなど、食品として問題が出やすい。
また、うまく組み込まれた遺伝子を抗生物質によって選別するために、大腸菌などの抗生物質耐性遺伝子を同時に組み込む。このため抗生物質耐性菌が発生するおそれもある。
『実質的同等性』という安全性評価にも問題がある。
Q.現実の被害は
A.「わからない」実際被害がでてみなければ、その現実的な害がわからないというのが一番の問題点。しかも具体的に見える形ででにくく、グレーゾーンとして残るということも問題。
●殺虫性トウモロコシの花粉を食べた蝶の幼虫が大量死した。アレルギー性があり食用として認可されていないトウモロコシが食用品に混入したなどの実害がある。
Q.除草剤耐性イネの害は
A.・遺伝子を組み替えたタンパクは土壌に残留しやすい?
・化学物質のような生物濃縮はしない。
・作物に直接かかるため、農薬の残留が問題になる。
・ラウンドアップは水に弱く、残留しにくい。ただし界面活性剤は残留しやすい。
Q.良食味米や低アレルゲン米などの消費者向けの遺伝子組み換えは
A.遺伝子組み換えのリスクを考えれば論外。その土地特有の品種を残すべき。
低アレルゲン米はアレルゲンとして働く遺伝子の動きを止める遺伝子を組み込むのが難しく、微生物の遺伝子をたくさん組み込まなければならないため、新たなアレルギーを起こすおそれがある。
Q.栄養強化した健康食品や医療食としての遺伝子組み換えは
A.遺伝子組み換えである必要があるのか。
※これらの報告や質疑はわかりやすくするため、簡略化と説明の追加をしています。 〜よーすけどん
遺伝子組み換え食品の安全性については、素人の私には本当のところはよくわからない。「推進派」も「反対派」も専門家でさえ、結局は実際作付けし、食べてみなければ本当のところはわからないだろう。
しかし相手は植物である。現実に環境中に放出されてしまってからでは、人間が管理することなど不可能で、こんなものを作付けするべきではない。
全国に広がった大豆畑トラスト運動などにより、日本で大豆を作ろうという意識は高まったかもしれないが、それが一般の消費活動にまで結びついていない気がする。
国の政策もあって大豆の作付けは徐々に増えてきてはいるが、一般の消費活動がこれに応えなければ、国内でも低コストの遺伝子組み換えダイズを作ろうという所がでてきてもおかしくはない。
今年、北海道、茨城、福井など六カ所1.7haの一般の圃場で遺伝子組み換えダイズが作付けされはじめた。日本人の主食であり、農地の大半を占める稲がそうなったら、日本の土壌、環境、日本人の健康、生命はどうなるのか。
− つづく −
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